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旅のラゴス

今、読んでいる一冊の本がある。
タイトルは「旅のラゴス」
“時をかける少女”等で有名な作家、筒井康隆氏の作品だ。
この本を読んでいると、つい先日出会った青年の事を思い出す。
彼は今頃、どこを旅しているのだろうか。
 

その青年と出会ったのは、家の近くのBARだった。
カウンターの椅子にもたれ掛けた、ギターケースが目に付く。
彼の地元は名古屋で、そこで「アクセル青春」というインディーズバンドをやっているのだという。
驚くことに彼は今、ギター一本を背負い、あとは無一文で、東京から徒歩で東海道五十三次・弾き語りの旅を成し遂げようとしている途中らしいのだ。
この辺りを通り掛かった時、ここのBARを見つけ、寄ってみたらしい。

徒歩だけで、東海道を渡り歩こうという発想もさることながら、無一文、ギター一本で乗り越えようとするその根性には恐れ入る。
そんなギター・流しの青年、暫くすると我ら客達の前で自作の曲を聴かせてくれた。
唄い始めた途端、皆その凄まじいパワーに圧倒させられる。
後から聞いたのだけれど、その力強い歌声は、地元のライブハウスで鍛えられたらしい。
伝えたいメッセージがあったとしても、声量がなければ伝わらないって事もあるだろう。
ヴォーカリストとしての必須条件を、彼は努力でクリアしていたのだった。
唄い終えた後は、誰もが拍手喝采。本当に心に響く歌声だった。

その後、酒があまり強くないという彼を無理やり朝まで付きあわせ、皆で一緒に酒を酌み交わした。
そこで、何日間か風呂に入れていない事を知り、彼を半ば無理やり自宅に招いて、シャワーを貸す事にした。
野宿が続いていたらしいので、部屋での睡眠を強要したのだけれど、彼は丁重にそれを断った。
曰く、このままの勢いで箱根の山を越えたい、という事だった。
そこまで言うのなら、と無理に引き止める事はしなかった。
彼は同じ場所に留まる事を良しとせず、先に進む道を選んだのだろう。
別れ際、彼は自作のCDとステッカーをプレゼントしてくれた。
お返しに、もう酒は呑めません、と言う彼に無理やりビールを持たせ、固い握手。
彼は解放された事への安堵からか満面の笑顔を見せ、いつの日か、この土地にまた戻ってきてくれる事を約束してくれた。 

「旅のラゴス」という物語は、
主人公のラゴスが一生を懸けて続けた旅を、描いた物語だ。
ラゴスが旅をしているのは、現実世界とは少し違った、荒廃した近未来のような場所。
ラゴスは、ある町では奴隷にされたり、またある町では英雄になったりしながら、時には他の旅人と行動を共にしたり、時には地元の住民たちと触れあいを重ねながら、旅を続けている。
旅をする主人公と、それを迎え入れる住民たち。
旅とは決して、旅をしている者達だけの物語ではないのかもしれない。
その旅人と交流を持った住民たちも、彼らの勇ましさに感銘したり、勇気をわけてもらったりもする。
それはお互いにとっての一期一会であり、出会いと別れなのだ。
そしてそれは、決して本だけの世界に限った話ではないだろう。
人は人生において、大小様々な出会いと別れを繰り返していく。
あの日の、名古屋の青年との出会いは、ほんの些細な‥
けれど特別な、一期一会だったのだと、そう思っている。

 
彼は今頃、どの辺りを歩いているだろうか。
無事に箱根は越えられたのだろうか。
目的の京へ、辿り着くことを祈っている。


そして、
今度もし会う事があったなら、いっぱい奢ってやるつもりだ。




P.S. 決して軟禁したわけではないので、地元のファンの方、お許しをw


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